和歌と日本の化粧
1000年前の日本人は、どんな化粧をしていたのでしょう? ― 和歌から読み解く、日本の美と化粧の歴史 ― 古典を読むと、化粧品に関する記述があると興味を持ちます。 そのたび、美しくなりたいという気持ちは今も昔も変わらないことを知ります。 誰かに会う前にメイクをし、髪を整えて、香りを身にまとう。 当たり前に思える美容習慣も、ずっと昔から人々の暮らしの中に存在していました。 面白いことに、その様子は和歌や俳句にも残されています。 少し趣向を変えて、日本の古典文学から「美」や「化粧」にまつわる作品を ご紹介したいと思います。化粧品開発に携わる立場から読み返してみると、 現代の商品づくりにも通じる発見があります。 1 .奈良時代にも、眉メイクに心を奪われた人がいた 振仰けて 三日月見れば 一目見し 人の眉引き 思ほゆるかな 『万葉集』巻六・ 994より 空を仰いで三日月を見ると、以前ちらりと見かけた人の、 美しく描かれた眉を思い出す。そんな意味の歌です。 奈良時代にも眉の美しさに心を奪われる人がいたのですね。 見事なメイクは印象的です。 当時は中国大陸の文化の影響を受け、眉の形はメイクのポイントでした。 美しい曲線を描くアイブロウ。 その印象が、忘れられない人の面影として記憶に残っているのです。 現代でもアイブロウはメイクの印象を大きく左右します。 眉の形ひとつで顔の雰囲気が変わるという感覚は、 千年以上前から存在していたのですね。 化粧品を開発する立場から見ても、眉メイクというカテゴリーが、こ れほど長く人々の美意識に関わってきたことに驚かされます。 2 .平安時代、長い黒髪は 長からむ 心も知らず 黒髪の 乱れて今朝は 物をこそ思へ 待賢門院堀河『千載和歌集』/小倉百人一首 第 80 首より あなたの愛情がいつまでも続くか分からず、乱れた黒髪のように、私の心も乱れています。 恋人と別れた朝の気持ちを詠んだ和歌です。 平安時代の貴族女性にとって、長く美しい黒髪は大切な美の要素でした。 当時の代...